東日本大震災その後(浜岡停止とO111)

2011.5.12 菊池喜康 記
1. 巨大津波の謎
 3.11の東日本大津波は、1000年以上前の西暦869年7月9日の貞観地震の津波を若干上回る(本当に)未曾有の天災であった様です。
 5月7日の「NHKスペシャル」で、地震津波学者の予想をも超える発生メカニズムの解説が報道されました。釜石沖20kmのGPS波高計には、地震直後の約2mの津波が一気に7mになったそうです。東日本の約100km東には、深さ1万m以上の日本海溝がありますが、そこで太平洋プレートが東日本の陸地を乗せる北米プレートの下に沈み込んでいます。このプレート境界が20m程度の逆断層破壊を起こしたのが、今回の地震の原因でした。しかし、実際は、この日本海溝の接合部分に、1000m程度の堆積層が重なっており、その堆積層に垂直な割れ目(分岐断層)があり、その分岐断層がプレート境界地震の圧力で、垂直方向に10m程度飛び上がったのが巨大津波のメカニズムだそうです。私は、数年前に深海探査船の映像で、垂直な壁を降りて行く光景を見て、不思議に思っていた事を思い出します。この分岐断層の研究はまだ殆ど進んでいないそうですが、東南海の海溝にも多分有り得る様です。この貞観津波に付いて、2010年8月24日付けの「貞観津波シミュレーション」論文がある事が分かりました。5月の小さなニュースによると、今年の2月に岩手県と宮城県(福島県?)に説明した後、3月中旬には全国に発表する予定だったとの事でした。宮城県仙台市周辺では、このシミュレーションより更に1km位奥まで津波に襲われた様です。

2.浜岡原発
 政府の要請で、中部電力は5月11日に「浜岡原発の停止」を了承しました。高さ8~10mの砂丘と海抜が数mの原発建屋の間に、高さ12mの防潮堤を建設するまで、2年間の停止だそうです。東南海連動地震の確率は30年以内に80%と言われ続けています。発生しても、多分、想定内の6m程度の津波と思いますが、前記の分岐断層の関係で、未曾有の15m程度の津波が無いとは言えないでしょう。その様な津波が発生した場合、砂丘を超えた海水が滝壺?の様な所にある防潮堤を破壊するかもしれません。また、御前崎市方面から裏山に上がった津波の海水が原発を後ろから襲う事も考えられます。その場合、防潮堤に遮られた海水は原発建屋のかなりの部分を水浸しにして、排水に時間が掛かる事になります。
 蛇足ですが、私が定年後に勤務した小さな会社で、浜岡原発の「地震観測システム」の孫請けの仕事をした事があります。このシステムが原発の地震対応に役立つとは思いませんが、国からのお金が余ったので提案して採用されたのでしょう。私が現場調整に先立ち浜岡原発正門の2階建ての小さな外注者控建屋で、安全研修を受けました。その際、常時は閉まっている正門の内側にある5m位の一方通行道路の横断歩道で、「左右指差確認と安全点呼」を厳しく指導され、違反者は入場停止になる厳罰でした。この講習で「原発事故時の対応」について質問した人に、原発の講師から「起こり得ない質問はナンセンス、この構内では交通関連の事故以外はあり得ない」と言わんばかりの回答があり唖然とした記憶があります。

3.浜岡以外の原発は
 政府の浜岡決定に菅総理は、「30km以内には、東海道新幹線、東名高速などの日本の幹線がある」事を理由にしていました。また、浜岡から30km以内の人口密度は福島の5倍で、避難となればもっと大変な事になりそうです。しかし、この説明では、他の原発立地住民は納得しないと思います。全国の原発は定期点検後の再稼働に地元が反対するでしょう。先日のラジオ勝抜時事川柳で、「浜岡を、お前先(御前崎)だと、停止させ」と言うのがありましたが、本当にそうなるかもしれません。
 フィリッピン海プレートの沈込帯は東海から始まり、文字通りフィリッピンまで続いています。伊豆半島はフィリピン海プレートに乗って、南の海から流れ着いて、日本に衝突して、箱根や丹沢の山々を作りました。また、伊豆諸島(なぜか東京都)の東側では太平洋プレートがフィリッピン海プレートの下に沈み込んでいます。東京湾沖には1000m以上の海溝があり、この付近で3つのプレートが入り組んでいます。日本地図を見ると、日本列島が東京湾付近で開き、折曲っている様に見えます。実際に関東平野は1000m位の割目に堆積層が溜まった構造をしています。この付近では何が起こるか分かりません。日本海側でも北海道から富山湾まで、北米プレートとユーラシアプレートが押合い、奥尻島津波や秋田沖地震などを起こしています。日本中どこでも津波は起こる可能性があります。ネットで沖縄の津波を調べた所、1771年4月24日に明和大津波が発生し、石垣島で85.4mの津波が記録されているそうです。
 想定外の津波は何時起るか分かりません。原発の場合は1000年どころか1万年スパンで考える必要がありそうです。元々、原発は地下に造るべきだったと思います。東京の環七の地下には巨大な洪水対策用貯水池が完成しました。海の下でさえ東京湾アクアラインを作りました。やろうと思えばできたはずです。最近はテロ(北朝鮮やアルカイダなど)のミサイル攻撃に対する心配も必要です。廃炉の時に、放射性残骸を解体処理するより、そのまま永久に閉じ込めた方が、コストも少なくて済みそうです。もし、既存の原発を使い続けるなら、海岸の取水口から原発建屋までコンクリートのシェルターで覆うなどの根本的対策を取りたいものです。

4.今後のエネルギー政策
 5月11日、菅総理は「2030年に原発50%とした今後のエネルギー政策を白紙に戻す」と発表しました。戦後の50年来国策として原発を進めたのは自民党でしょうが、交代直後の民主党政権にこの様な事を言わせたのは皮肉な結果です。まあ、CO2削減を「1990年比25%減」を政権交代直後に国民の合意無くして宣言したのは前鳩山総理でした。撤回の理由がついて良かったのかもしれません。
 日本の企業は世界のクリーンエネルギーの推進に役立っているそうです。例えば、三洋電機がタイとかインドに巨大な太陽光発電施設を建設中と聞きました。また、地熱発電も有力なクリーンエネルギーですが、原発を拒否してきたフィリピンは全電力の14.4%が地熱発電との事です。11.4%のアイスランド、5.1%のニュージーランドなど、日本の企業が多数の地熱発電所を建設して来たそうです。
 私が50年前の学生時代に、秋田県横手から栗駒山経由で宮城県鬼首温泉に向かう途中で、鬼首津熱発電所を通りました。その当時は最新の技術だったそうですが、その後、日本は遅れに遅れて、50年後の今日、地熱は全電力の0.2%しか無いとの事です。
 日本では、地熱発電可能地域が国立公園内にある事、地熱発電実験中に数10km離れた温泉の湧水量が減った等のクレームがあったとかで、電力会社が前向きで無かった様です。そんな中、今後「国立公園内の地熱発電を許可する。」と言う小さなニュースを聞きました。更に、風力でも太陽光でも、発電コストが高いとの理由で、日本のみが遅れている様です。原子力村と称する官僚・民間(電力会社とプラント会社)の癒着に政治家が加わり、原子力発電の経済性について、「絵に描いた餅」を作ってきた様です。今回の事故でその原子力神話は崩れました。原子力発電のコストに地元交付金が入らず、廃炉や燃料の最終処理費用も殆ど入っていなかったそうです。
当面、効率の悪い古い火力発電をフル稼働する等で電力を補う必要があります。中部電力は浜岡原発の停止のみで年間2500億円の損失と言っています。更に、中東の暴動などの影響で石油価格がどんどん上がっています。したがって、相対的に風力・太陽光、地熱のコストが下がり、クリーンエネルギーの推進に役立つ事でしょう。電力会社は地域独占の絶対に潰れない企業としての慢心があったと思いますが、この際、政府がエネルギー政策を白紙から何らかの色を着ける際に、将来の姿が見える様にして頂きたいものです。

5.集団食中毒(O111)
 「焼肉酒家えびす」の食中毒事件はすっきりしません。同じ時期に、金沢・富山・神奈川の同じ系列店で発生し、何れも卸業者の大和屋商店から仕入れた加熱用肉を「ゆっけ」として「生」で客に提供したとの報道です。どこかで、相当大量の菌が繁殖した可能性が有ります。厚生省は生食用の肉処理通達として、「トリミング」を指導していたとの事ですが、報道されたトリミングの映像では、生肉の塊をまな板に置き、上をスライスして外し、横をカットして、同じまな板にひっくり返して裏側をスライスしています。これでは、大量の菌が付着していた場合、まな板や包丁を介して菌が移ることは避けられません。この様に菌が大量に付着した肉が家庭用に売られていれば、もっと広範囲で被害が出た可能性があります。怖い怖い事です。
したがって、この様に大量に菌が増える過程を避ける事が第一だと思います。BSE問題から牛には生まれた時から耳に固体識別番号が付けられ、生きている間の農場の移動から流通過程での小売りまで、この番号が伝わる様な仕組みができたはずです。それを調べなければ意味がありません。でも、もしかして、これも「東日本大震災」の影響かもしれません。
例えば、牛の腸の中には、O111が住んでいる(当たり前?)との事ですが、牛は発病しないのでしょうか? 牛も人も同じ動物ですのでそんな事は無いでしょう。牛にはO111に免疫があるのでしょうか? 今回の震災で牛乳の出荷制限(100ベクレル/kg以上)がでました。乳牛が乳を出すのを抑えるため、飼料を少なくしているとの話もありました。栄養不足で免疫機能が落ち、牛の腸内でO111が増殖した事も考えられます。その後の調査では、看板の「和牛のゆっけ」に、卸業者からの交雑経産牛(乳牛?)が使われていた事もあると分かった様です。
食肉の流通経路は、畜産農家から食肉センタ(と殺場)に運ばれで、卸業者にセリで買われます。一般に、同じセンタ内で「と殺」され、続いて頭、四肢、内臓、皮が除かれ、背骨に沿って二分割されたものが「枝肉」となり、卸売業者によって搬出され、卸業者の倉庫や加工場に送られます。現代に於いては、この間は10℃以下の冷蔵状態で作業・運搬が行われています。今回の震災で、この間のどこか冷蔵状態が6時間以上失われた可能性が考えられます。震災直後の停電で冷蔵設備が止まったとか、燃料不足による運搬車両の冷房停止です。3月の計画停電は3時間以内でしたから、特に問題無かったかもしれませんが、夏季に3時間程度の計画停電がもしあるとすれば、業者のみならず家庭でも、食中毒問題が発生する可能性が極めて高いと思います。
この様に、内臓と肉は早い段階で分けられますが、大和屋商店などの焼肉卸業者の場合、皮肉にもここで内臓と肉が再び一緒になります。大和屋商店の家宅捜査で「内臓とユッケ肉」の包丁やまな板を使い廻していたとの事です。
唐突ですが、コストコ多摩境店の駐車場崩落事故と「裏」が共通な感じがします。次にその辺を考えたいと思います。

6.職人気質の変化
 コストコの事故では、私の入っている40人程度の小さなサークルのご夫妻が亡くなりました。東京新聞位しか取り上げなかった小さな記事で、「3階駐車場とスロープ間の溶接6ヶ所が全て破断していた。建築許可を出した町田市は設計上の問題は無かった。警察が調査に入った。」とありました。ここは、もともと別名「コストコ倉庫店」と言われ、耐震審査が甘かったでしょうか、地震直後に天井は崩れ、商品は通路に散乱したとの事です。スロープは鋼鉄製でその上にアスファルトを敷いたかなり重い物だそうです。設計審査が「姉歯」類似かどうかは別として、同一作業員が施工したと思われる6ヶ所の溶接に問題がありそうです。溶接は、鉄材と鉄材に溶接棒をあて、電気的ショート熱で鉄を溶かし接着するのですが、昔から「てんこ盛」と言われている接着不良があります。表から見ると溶接後が「もっこり」として一応正常に見えますが、中の鉄材と鉄材が融け合わず接着が弱い状態です。
 一方、食肉業は「と殺」として忌み嫌われ、同和などの部落民の仕事とされてきました。特に関西では、部落民は住む地区も分れており、就職の際にも「住所から不採用になる」状態が最近まで続いてきました。現在、少なくなったと言え、良い会社に入れなかった落ちこぼれが多い可能性があります。
 しかし、この様な事故は、日本の将来を憂える「根の深い」問題でしょう。私の「素人が憂える真実」シリーズの一つとして、取り上げて見たいと思います。
 戦後の復興を支えたのは、電力会社、鉄道、建設、精密機械、電気、自動車など、戦後の経済発展に寄与した会社の社長達ではありません。そこで働く職工や下請けや孫請けの職人達でした。腕のきいた職人達は先輩の技術を盗み、真似して、努力して鍛え上げ、自分の技能に誇りを持ってきました。それ等の職人達が今、定年を迎えようとしています。昔の職人達は「自分が教わった事」が無く、教え方が分かりません。一方、若い職人の卵達は「教えてもらっていない事はできない」と「シャーシャー」としています。雇う側の価値観も変わり、職人の技量よりもマンパワーとして、安い非正規従業員で済めば「更に良い」と考えています。
 余談になりますが、JR西日本で尼崎脱線事故ありました。私はその報道で、事故原因は「日勤教育」と直感しました。調査委員会の結論では「運転ミス」、後になって渋々「自働停車装置の設置遅れ」を認めていました。私が直感したのは、1つ前の駅で150mオーバンランしてダイヤに遅れがでていました。そこで、車掌と「オーバーは5m」と報告しようと交渉して、断られた矢先にカーブに差し掛かったのが事実の様でした。日勤教育とは1日中密室で監視され、「反省文」を沢山書かせる「苛め」の様なものでした。過去に日勤教育を受けた事のある若い運転手は「小さい頃からの夢」を実現して運転手になったのかもしれません。再度ミスをしたら「運転手を降ろす」と言われた事もあったでしょう。そこで、運転手はカーブの直前で、少なくとも「真っ白」になった事でしょうし、「死んでもいい」と思ったかもしれません。その様な職人の心理が分からない「報道」、「調査」から「裁判」までのホワイトカラー族が残念です。

 日本が豊かになったせいでしょうか、教育のせいでしょうか、最近の若い人には「こつこつと腕を磨いて上達して行く」事ができなくなっていると思います。
 私は趣味として、テニス、ゴルフ、コントラクトブリッジ、スクエアダンスをやっていますが、考えてみれば、全て「職人と同じ」と思います。こつこつと練習して、何年も掛けて少しずつ上達して行く必要があります。今の若い人は、「携帯電話やゲームにお金が掛かる」からできないとの説もありますが、職人気質が無くなりつつある証とも思っています。どのクラブも老人クラブになりつつあります。若い人が殆ど入ってこない為、10年後位にはクラブ自体が消滅してしまいそうです。
 今の少年は「野球やサッカーを熱心にやっている」と反論するかもしれませんが、年を取った時、「お金を出せば遊べる」と言う遊びを若い時に選択するのも大切でしょう。放射性物質が怖いと「外に出る習慣」が無くなる事も心配です。世界一の長寿国日本が、寿命の短い「メタボ国」の一つに成ってしまうかもしれません。
ご存じない方の為に一寸説明しますが、スクエアダンスはコーラーと言う指揮者が数10人から数100人のダンサーに、複数の英単語を組合せたコールをだして、男女4組(8人)1セットのダンサーを動かすスポーツの様なものです。初級でも半年位の「親切この上ない」講習で教え、更に何年か踊込みをします。更に何段階もの上級コースがあります。最近、若い人の参加が少なく、平均年齢は60歳以上です。エリートのご主人は、奥様から誘われても「俺は誰かにとやかく言われたくない」と言うらしく、70~80%が女性の世界です。多くの女性が「たすき」の目印を付けて、男性役を務めています。

以上 2011.5.18完
私のブログは、
http://kikyossya.at.webry.info
です。前回は2011年4月16日に「東日本大震災と福島原発事故」をアップしています。

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