人類は何処から来て、何処に行くか(2003年記)

(エデンの園は実在したか)
菊池 喜康 著
1. 人類は何処から来たか 
 旧約聖書によれば、神がアダムとイブを作って、エデンの園に住まわせたとなっている。
しかし、最近のDNA解析の結果、人類は、オランウータンから1500万年前に、ゴリラから700万年前に、チンパンジーから500万年前に分岐したことが分かった。チンパンジーと現代人のDNAは、98.77%が同じ事も分かってきた。また、魚の祖先と思われる「ホヤ」と現在人のDNAは79%が同じらしい。生物の進化は、従来、DNAの突然変異から起こると言われてきたが、環境に適用する為の「変化」と組み合わされて起こるらしい。

2.チンパンジーとの大きな相違点
 チンパンジーと人類とは、動物的に何が違うのだろうか。まず、「頭脳」が発達した事から人類の進化が始まったのであろう。頭脳が発達した結果、「道具」を作れる様になった。それは、頭脳の分化(ある臓器がある大きさで成長が止まり、ガンの様に無限に増殖しない機構)を制御する遺伝子が突然変異で消滅したため、人類の祖先に進化したとの説もある。全てのサル種にはあるが、現代人にのみ無い遺伝子が見つたからである。
そして、サルとの違いは、「二足歩行する」「毛が無く裸である」「言語が話せる」などが、直ぐに判る。しかし、「ペニスが巨大である」と言う点については、意外に見落とされている。以下、この主な相違点を見ながら、人類の進化について、考えてみたい。

3.人類の祖先はどんな生活をしていたか
 当初の人類の祖先も、アフリカの森でチンパンジーと同じような生活をしていたと思われる。しかし、その間に、頭脳が発達して、火を使い、衣服を着、食料を蓄えるなどの行動を身に付けていったと思われる。テレビなどで、人類の祖先が「裸のまま、棒を1本持って、歩き回っている」映像を見たことが有るが、そんな事は無いと思う。現在でも、南方の未開人の部族がその様な格好で生活している事からの想像だと思うが、彼らは、進化の袋小路に入り込んだ少数派であろう。一旦、陸上に上がった後、海に戻って成功した「鯨」の様な例もあるし、必ずしも進化は先に進むとは限らず、先祖がえりもありうる。
 最近の数百万年の間には、何回かの氷河期があった事も知られている。氷河期になると雨が少なくなり、アフリカの森も、草原に侵食されて、小さくなった事が度々有ったらしい。人類は、森と草原を使い分け、先ず、道具を使い、火を使い、雨風をしのぐ家にも住み始めていたと思われる。その様な生活環境から、「毛が無くなった」と思う。やはり、温かいアフリカの森と言っても、寒い時もあるし、裸で歩き廻るという事は、如何にもみすぼらしい。他の肉食動物からも捕食対象として見られてしまうだろう。また、人類の祖先は洞穴に住んでいたと思われてきたが、洞穴は既に虎や豹などの肉食動物の棲家であり、木の上に住んでいたサルの子孫(人類の祖先)が突然洞穴に住むとは思われない。時々、洞穴で人類の祖先の骨が見つかるのは、不幸にも、それらの肉食動物の餌食となり、洞穴に運び込まれて、食べられた為と思われるようになってきた。
 そんな生活を何十万年も続けていた時、アフリカの東部に大地溝帯(マントルの上昇によって大陸が東西に分かれる)が始まり、4000メートルの山脈がでた。その東側の森が消滅し、廻りが草原に変った折、その環境に最も適応した完全な「二足歩行」の身体に進化したと思われる。草原では、両手に物を持って、二足歩行をする方が便利だ。また、他の動物が、相手の強さを判断する際、相手の目の高さで、判断しているらしい。二足歩行の方が、背が高く有利である。例えば、犬の躾の場合でも、人間の目の高さ以上になる様に、例えば、肩に乗せたりすると「威張るようになる」ので、止める様にといわれている。

4.なぜ裸になったか
 火があり、着衣の生活が続けば、保温を主体とする毛皮は不用になる。衣服の中で、擦り切れ、蒸れて、脱毛していったという事も考えられる。一方、百獣の王のライオンなどは、立派な毛皮を持っているため、暑い昼間は、木陰でごろごろしているしかない。人類の祖先も、「夜は眠る」昼型であったろう。草食獣の様な「大きな胃腸」も無く、食い貯めもできないので、ライオンなどが寝ている昼間に、家や衣服を作ったり、狩をしたり、森に食物を探しに行ったりの労働をしていたに違いない。毛皮が無くなると同時に、汗腺が発達し、その為に、暑いときでも、体温を下げる手段ができた。年中仕事ができ、生産性の向上に貢献したと思われる。私の場合も、テニスを始めてから、汗腺が拡大したらしく、夏のテニスコートでは大水を飲んで、大汗をかく様に、あっという間に進化してしまった。馬も汗をかく。生死を分ける競争に勝つ為に発達したのであろうが、夏でも仕事ができる為、人間が競馬などに利用してきた。しかし、「毛の手入れ」は人間が行っている。

5.ペニスの進化は如何して起こったか
人類の祖先も、現在のチンパンジーと同じように、群れをなして行動していたと思われる。性行動も同じであったと考えたい。チンパンジーの場合は、年1回の発情期が有って、その時には、1匹のメスのお尻が赤く充血し、1日に何十匹ものオスと性交渉をする事が知られている。ペニスも5cmぐらいと小さく、インサート時間は数秒らしい。ゴリラの場合は、更に3cm位と小さく、インサートがいつ始まって、いつ終わったかも分からないとの事である。
発情期と言うのは、子供を生む時期を、「食物が豊富にあって、気候が良く、育てやすい時」に、子供が生まれる様に遺伝子の中に組み込まれた季節感らしい。ペットの犬でも、食事に不便しなく、家の中の暖かい所に暮らしてきた種類の場合、年中が発情期とのことである。人類の場合も、神様が「勝手にしなさい」と言ったからでは無く、家が有って、食物の備蓄ができるようになれば、次第に、発情期が無くなったであろう。また、チベットモンキーに面白い習慣があるらしい。勿論、メスの相手は、基本的には、第一順位のボス猿の権利であるが、集団内のオス同士の戦いを回避するため、順位の下のオスは、順位の上のオスにペニスをしゃぶってもらう事によって、服従の意向を示すのだそうだ。また、順位の下のオスがメスと性行為を行っても、その場では戦いを避け、後で、ボスがそのメスとより長い性交渉を行うテレビ場面が、今年の初めにあった。更に、こぼれた精液も大切な蛋白源として食べて、より強くなると解説していた。人類の祖先の場合も、女達は仲良く子育てをし、男達も仲良く狩などの共同作業を行う必要があったであろう。
人類のペニスは、巨大なだけでなく、その形も奇妙である。メスを引き付けるディスプレイ(女性の巨根崇拝説)との考え方もあるが、これはむしろ、男性側の劣等感から出た話であって、大きいペニスを見て喜ぶ女性は、今でも少ないし、以前も少なかったであろう。チベットモンキーからの類推で、人間のペニスは、ピストンではないかと思われる。立派なピストンリングまで持ったピストンで、よりピストン運動回数の長いオスほど、先に入っていた精液をかき出し、自分の精子を残せた。その様なペニスの持ち主の子孫が繁栄したと考えられる。

6.現代人の祖先
 「ミトコンドリア・イブ」と言う話がある。ミトコンドリアは、生物の1つ1つの細胞中に、200個ぐらいづつあり、細胞から栄養をもらって、細胞にとっては「毒」である酸素を使って、細胞増殖とか筋肉運動などのエネルギーを作ってあげている200ミクロン位の寄生生物である。元々、細菌の様に独立に存在していたものを、初期の生命体が、感染したか、寄生させて、取り込んだものと考えられている。ミトコンドリアは、あまりにも小さくて、長い間、その中のDNAを調べられなかったが、最近のDNA研究から、ミトコンドリアDNAは母性遺伝する事が分かって来た。その結果、現在、地球上に存在する人類は、全て、一人のお母さんの子孫である事が分かった。その年代は、約17万年前と言う事も推定されている。なお、日本人の90%は8人のお母さんの子孫らしい。
一方、3万年ぐらい前に生存していたネアンデルタール人の化石が見つかっていた。頭蓋骨の形などから、現代人の先祖ではないらしい。もっと、毛深くあごが出っ張っていてゴリラに近い様だ。そのため、一寸前まで、現代人の祖先は、ゴリラではないかと思われていた。私は、昨年末に、トイレのウォッシュレットを買って、組み立てた。世界中の殆どの人の、お尻の穴の位置が共通だから、外国に行っても同じトイレが使えるのだ。現代人が似ている事について、別の見方もあった。それは、「人類は、一時、絶滅寸前であった」かもしれないと言う事である。動物保護の立場でも、個体数が600以下の種は絶滅寸前であり、特に保護の対象になっている。
 現代人が、世界中に広がっていったのは、今までは、1万年ぐらい前と言われていたが、最近、南米の原住民と思われていたよりも前の、3万年ぐらい前の化石も見つかっている。また、6000万年前にパンゲア(一つの世界大陸)から別れたオーストラリアに原住民が住んでいるのも不思議である。多分、部族間の闘争などで、一家、一族の男女が揃って、その難を逃れる為、行方も知らぬ大海原に船で逃げた歴史があったのであろう。でも、オーストラリアの様に肉食獣もいなく、人類特有の伝染病も入ってこない新世界に渡っても、そんなに人口を増やせながったのは、食料を含め、人類が生存して行く条件は、最近まで結構厳しいものであったに相違ない。

7.言語の発達と文化
もう一つの特徴は、「発声」である。有名な京都大学の霊長類研究所の「愛ちゃん」の場合、3歳ぐらいまでは、人間の乳児と同じように、文法的な概念まで理解して、学習できる。人間の言葉もある程度理解し、認知や計算もできる様になったが、発声(しゃべる事)だけは、とうとうできなかったそうだ。それは、生まれつき「のどの構造」が人間の言葉をしゃべるようにできていないらしい。バウリンガルと言うのがある。これは、1万以上の犬の鳴き声を分析し、音韻を元に犬語をディスプレイする装置である。昨年のイグノーベル賞(ノーベル選考委員会が選定した「くだらない?」ノーベル賞)を受賞したらしい。先週、近くの安売り店で先着5名様に13,320円で売っていた。買い損なって、残念だった。
声の化石は残らないので、現代人がいつ頃「言語」を獲得したのかはわからない。日本列島に、南洋の島伝いにやって来た縄文人は、DNA的にもモンゴル人と共通のお母さんである。その時、現在の日本語の元になった「話し言葉」を持って入ってきた。一方、ギリシャ語から発展したイタリア語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、英語などが、文法的に共通であり、日本語の文法とは異なっている。モンゴル系の祖先が枝分かれした後に、言語らしき言葉が始まったのであろうか。或いは、「言葉」と言うものは、昔遊んだ「電話遊び」でもわかる様に、何十人、何十年と伝える間に、変ってしまい、共通の祖先の一つの言語が、今の様に多様化されたのであろうか。今後、この辺の資料も探してみたい。
人類が言語を使用するようになると、それまで「見よう見まね」でしか伝えられなかった技術などの文明を、子孫に言葉で伝える事ができた。そこに、初めて「文明の蓄積」が始まる。また、集団のなかで、ルールを決めて、初歩の治世も始まったであろう。その後、文字が発明されて、直接会っていない人々の知識も正確に永遠に伝わるようになり、「学問」が発達し、文明の発展に大いに役立った。中国の漢字が紀元前3千年頃に始まり、エジプトの喫形文字もその頃と言われている。しかし、南米の「ナスカ」には、もっと以前の文字があったらしい。文字だけではない、「ナスカ」には、巨大な地上絵があり、何キロもの真っ直ぐな直線や曲線の図形がある。近くに行って見ると、それらの線は、石を端に寄せた幅1メートルぐらいの道路状のものらしい。こんな物を何のために作ったのか、宇宙から見てもらう為に作ったとしか考えられない。

8.人類で発達した快楽神経
 現代人の脳には、A10神経と言う快楽神経がある。この神経にパルスが走ると、脳内麻薬物質といわれている「ドーパミン」が作られ、「気持ち良く」感じる。動物では、食欲中枢や性欲中枢から繋がっている程度らしいが、人間の場合は、大脳新皮質まで伸びていて、達成感、成就感などでもドーパミンが出る。それが、ある人によっては、闘争欲、金銭欲、出世欲などに結びつく。そんな「個人の快楽」のために、なんと多くの人々が犠牲になってきたことか。
わたしが、経験した貴重な事実を公開したい。私は、16年前に「大腸がん」の手術をした。その際、3本の神経を切断されたらしい。一つは「寒い時に足先の血流を少なくする神経」で、冬でも左足だけ暖かい。次は、「左腿の触覚神経」で、触った時に「痺れ」を感じる。もう一つは、「射精神経」ある。手術した医者は、それらの神経の作用を知っているらしく、それらの障害は全て「私の所為です。」と言っていた。射精が起こらなくなり、若かった私は、精液が溜まって、気がおかしくなるかと思ったが、そうはならなかった。オナーニでも何でも、射精しなくても「イク」のである。その時、実物は出なくても、脳は下半身の神経に射精の運動を指令し、脳は満足して、その後は、しばらく「性欲減退期」となるのである。セックスは、殆ど「脳が行っている遊び」なのである。性欲増進の為、性液に似た「卵白」が良いとか「とろろ」だとかはナンセンスなのである。せいぜい、脳を鍛える方が良い。実際は、ひもじい思いをして、「子孫を残さなければ!」と体が反応するためであろう。世界の貧困な民族に、なんと子供の多い事か。

9.エデンの園は本当に有ったか
 現代人の祖先は、最近まで「豊かな生活」はできなかったと思う。世界中で、白人を除く多くの民族に、「節約遺伝子」が存在する。特に、ハワイ原住民などは、100年前まで、「タロイモ」を主食として、筋肉隆々な身体をしていた。草食動物の「うさぎ」などで、1日1回便を食べ、腸内で増殖した腸内細菌をたんぱく源にしている。人間の場合も、腸内細菌のたんぱく質などを大腸で吸収できる遺伝子を持った民族もいるらしい。日本人の殆どは、そこまでできなくとも、余った栄養を「脂肪」として蓄えやすい遺伝子を持っている。すなわち、欧米人に比べて「太りやすい!」のである。
と云う事は、「食べ物に困らないエデンの園」は、マンモスなどの巨大動物を主食としたり、羊や山羊を連れて歩いていた遊牧民の世界など、ほんの一握りの集団にしか存在しなかったであろう。ヨーロッパ系の人々はアルコールに強い。それはアルコールを分解する酵素を作る遺伝子を持っているからである。狩で得た獲物をアルコールで保存していたのであろう。巨大動物の捕獲に成功すれば、当分休みが取れるし、遊牧民は生きた食料が常に身近にいた。
 人類は、2足歩行になり、その結果として、「正常位」を獲得した。その結果、男性のペニスの先に相当する女性のクリトリスが刺激される事になり、膀胱との間の敏感な場所にGスポットまで発達した様だ。それまでは、義務として行っていた女性のセックスに「楽しみ」が加わり、発情期も無く、乱婚の集団では、さてどうなるか。「快楽」(楽園?)の世界である。そこは「エデンの園」だったかもしれない。そこに、有能な「治世者」が現れ、それまに、充分に発達していた「言語」を用いて、「旧約聖書」の元になる「歴史物語や誓約書」を作ったのであろう。「いちじくの葉」で、覆ったのは、「体の一部」ではなく、性を覆い、「性を恥らう気持ち」を持たせたのだと思う。しかし、そんな事で、一度味わった快楽を捨られるはずはない。その昔にも、「エイズ」が蔓延し、聖書の教えに基づき、一夫一妻や処女崇拝を守ってきた民族のみが「現存している」と言う事もありうる。

10.現代人の進化は続いていた
 今年の初めに、ハワイに行った。機中や現地で色々な人種の人を見かけた。皆、よく似ている。やはり、「一人のお母さんの子孫かな」とつくづく思った。民族による身長の違いは1.5倍にもならない。オリンピックでも民族別には行わないで、平等に競争している。しかし、次の数字がお解かりだろうか。モンゴロイド 10.2~14.0、3.2、コーカソイド 14.0~15.2、3.8、 ニグロイド 15.9~20.3、5.1。これは、ペニスの長さと直径だそうだ*1。一人のお母さんから生まれ、各地に広がっていく間に、見えないところでは、進化が進んでいたのだ。この数字は、アメリカにすむ各人種の値を測定したもので、気候や、食料などの環境の差は殆ど無いと言える。このペニスの差は、出産する胎児の大きさの差ともなり、100年前までは、乳幼児の生存率の差として、人口増加に役立ってきたと思われる。しかし、現在は、医療の進歩により、むしろ「小さく生んで大きく育てよう」が可能となり、現代では、医療の進んだ国の平均寿命が高い。

11.これからの地球環境問題
 最近、地球環境問題が深刻になっている。産業革命後の200年この方、先進国を中心に、地球の化石燃料をふんだんに使用してきたためだ。
地球が生まれた46億年前には、46気圧に及ぶ炭酸ガスに満ちていた。気体の酸素は無く、地表や海面には、強烈な紫外線が降り注ぎ、生命体が存在できない環境で有った。その炭酸ガスは土壌のカルシウムと結合し、海底に堆積して行った。また、地球誕生から5億年位の頃に、海底100メートル付近で生存する酸素を嫌う嫌気生物が生まれた。その後、太陽光をエネルギーとして、炭酸ガスから炭素を固定し、自らの体とする生命体、即ち、葉緑体を持った植物プランクトンに進化した。その子孫が植物となり、地球上の気体酸素の殆どを作った。また、その頃、それらの植物プランクトンを食べる動物プランクトンも誕生し、10億年ぐらいの間に、三葉虫など、貝殻を持った生物の全盛時代となった。これらの生物が更に炭酸ガスを固定した。秩父や秋吉台などの石灰岩も貝殻やサンゴの化石であり、セメントの材料として使われている。
 地球環境問題の中で、特に深刻に議論されているのが地球温暖化問題で、大気中の炭酸ガス上昇による温室効果で地球が温暖化する事と言われている。地球の気候が現在の様に安定しているのは、ここ1万年ぐらいで、その前は、大きな氷河期だけでなく、小さな氷河期と間氷期とが数千年単位で繰り返す苛酷な気候であった。ここ1万年の安定な気候を作ったのは、地球規模の「熱循環器」ができた為との説がある。それは、グリーンランド沖での重い海水の沈降である。グリーンランド沖には、カナダやノールウェイなど北大西洋沿岸から氷山が流れ出していた。冷たい氷山に接触した海水は、純粋な水分が先に凍り、塩分の濃い海水を残す。その重い海水は4000メートルの海底に沈んで行く。それを埋め合わせるように、暖かいメキシコ暖流が北上し、イギリスなどの高緯度地方の気候を温暖にしている。沈み込んだ重い海水は、海底で南下し、アフリカの喜望峰の先から南極海を廻り、インド洋を北上し、2千年ぐらい掛って、太平洋の赤道地帯まで達しているらしい。その間、各所でミネラルを豊富に含む深海水として上昇し、魚類の宝庫となると同時に、赤道地帯の気温が上がり過ぎないように調節している。最近、氷山が少なくなり、「数年前に、この海水の沈降が止まった」との報告もある。
 また、知床の岬に、春先にやって来る流氷がある。シベリアの雪解け水が流れ込み、比較的塩分濃度の低いオホーツク海で、冬期に厚さ2メートル程度の氷ができる。その氷原が南下し、明るい氷の下で、膨大な植物プランクトンが発生する、世界中の水産資源の80%は、ここの植物プランクトンが炭酸同化した含水炭素をエネルギーとしているとの説もある。地球温暖化により、この様な大きな自然サイクルが変ってしまう心配がある。

12.現代人はどうなるか
 地球温暖化をもっと単純に捉えると、南極大陸の氷が溶けて、海水面が何十センチ上昇するなどの些細な事を問題にする向きもあるが、もっと重大なのは、地球の砂漠化であろう。地球表面の温度が上昇すると、地上や海面からの水蒸気の蒸発量は増加するから、雨の量は確実に増える。しかし、その降雨は、局所的に大雨をもたらすだけで、地上の殆どの乾燥地帯を潤す事にはならない。現在でも、複数の国を流れる大河の場合、上流の灌漑設備の向上により、下流の国の水不足が深刻になるなどの国際問題を起こしている。緯度的に砂漠地帯にある日本は、日本海ができたお陰で、水に恵まれている。しかし、食料の半分程度を海外から輸入している。食糧は、その輸入量の10倍以上の水を使って耕作された物であり、食料の輸入、即、水の輸入に他ならない。日本は水不足が深刻な多くの国から、膨大な水を輸入しているに等しい。
 今後、地球の人口は確実に増加するが、水の供給面からみると、食料の生産量が現在より増加する見込みは殆ど無い。また、発展途上国の生活水準も、もっと向上したいと望むだろから、何れ、どこかで人口増加が止まらざるを得ない。その後、どうなるかの予測は困難である。まさか、国連の規約などで「一部のクローン人間の誕生のみが許される」様な世の中にはなって欲しくない。
 もっと極端な例を考えてみたい。6500万年前に、直径10kメートルの隕石が、現在のパナマ付近に落下し、何千年もの冬の時代に入った。海面は何百mもの厚さの氷に覆われ、恐竜を初め、地球上の2/3の種が絶滅したと言われている。これを救って元の地球に戻したのは、炭酸ガスによる温暖化のお陰だとの説が有力だ。もし、現在、この様な事が起こったら人類はどうなるのであろうか。大半の人々は生き残れないであろう。しかし、氷と燃料さえあれば、限られた人々は生存できると思う。植物は現在の太陽照射の20%程度で育つし、ある波長の発光ダイオードの光を与えると、急速に成長する事も分かって来た。零下50度くらいの寒さに耐えるドームに何千人かづつの人々が暮らしているかも知れない。これでも、地球外惑星、例えば、月、火星、土星の惑星のタイタンや木星のエウロパなどに移住するより余程たやすい事だと思う。
 月以外の上記の天体には、現在も水か氷が存在すると思われている。神が我々生命体に恵みを与えてくれたとすれば、それは唯一、宇宙共通の水の性質ではないかと思う。水は本来、沸点がマイナス90℃の物質であるべき所、水の分子の酸素に付いた2つの水素の角度が104.5度である為、その反対側に別の分子の水素が結合し、沸点を100℃と高くしているのである。他にも、水は4℃で比重が最大になるため、池の氷は上から凍るのである。
 地球に大異変が起こらなかったとしても、食糧不足やエネルギー制限は、じわりじわりやって来る。決して、「世界中の人々が平等に平和に暮らせる」理想世界は実現できない。アメリカは地球温暖化防止の京都議定書に調印していない。その理由は、世界の事はさておき?「アメリカの経済に貢献しない」と言うものだ。他にも、イラク問題、北朝鮮問題などで、アメリカ人の独りよがりが続いている様に思う。より系統的に近いヨーロッパの人々の考え方とも乖離してきているようだ。特に、ヨーロッパの人々が、エネルギーや廃棄物問題で、より「哲学的思考」をしているのに対し、アメリカの「自分本位の考え方」が目立つ。人類の「未来への生き残り競争」が既に始まっているのかもしれない。

以 上
*1:「BC!な話」竹内久美子著(1997年、新潮社)
2003.01.29
麻生哲学同好会にて

「素人が憂える脅威シリーズ」に興味のある方は、以下のメニュー・アドレスから、別のアップも参照してください。
http://kikyossya.at.webry.info/200907/article_1.html
シリーズ①:政権交代後の期待と憂慮
シリーズ②:世界大都市海没の脅威
シリーズ③:日本人大量餓死の脅威
シリーズ④:日本の水と森林壊滅の脅威
シリーズ⑤:世界最終戦争の脅威
シリーズ⑥:世界金融危機の脅威
シリーズ⑦:新型インフルエンザの脅威
シリーズ⑧:宇宙誕生から地球消滅の驚異(2007年記)
シリーズ⑨:地球は誰のもの-地球を守る政治-(2006年記)
シリーズ⑩:人類は何処から来て、何処に行くか(2003年記)

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