新型インフルエンザの脅威

2009.06.03 第1版
 メキシコで豚インフルエンザが人から人へ感染する様に変身して、死亡者が多数出ているとの報道があったのは2009年4月上旬であった。恐れられていた強毒性の鳥インフルエンザ並みの感染力と死亡率をもった新型かと世界を強震させた。その後、アメリカにも感染が拡大して、5月の連休に海外から帰ってくる感染旅行者を日本の水際で食い止める必要があると政府が判断して、警戒態勢を取っていた所、アメリカから成田に着いた2名から新型インフルエンザが見つかり、その患者の近辺の座席の10数名を成田のホテルに11日間拘留することになった。その頃のアメリカの情報では、あまり死亡率が高くない弱毒性のインフルエンザではないかと言われ始めた。弱毒性の場合、メキシコの死亡者数から推定すると感染者は1万人を超えるとの憶測もあった。しかし、真実は医療保険の充実していないメキシコでは、かなり重症にならないと医療機関に行かない人々が多い為らしい。
そんなこんなの5月中旬に神戸や大阪で新型インフルエンザの感染が広がった。海外旅行者との接点は明確になっていない。感染が広がったのは、高校対抗バレーボールの選手を通じてらしい。バレーボールではグリップ力を高めるために手に唾を付ける光景はあまり見ないが、ボールを持って大きな声で「活」を入れる光景は良くある。ボールに付いた菌が菌玉として飛び交った事であろう。
強毒性インフルエンザ予防体制のルールに従って、神戸と大阪の学校の1週間の休校も実施された。水際では防げないこの事実と弱毒性から政府も飛行機内での検査を止め、成田の拘束者も1週間で開放した。しかし、これ等の経験を通して、本当の強毒性のインフルエンザが発生した場合の防御策の弱点が見えてきた。今後の改善は必要だが、日本のみ蔓延を免れるなどとの考えは甘い事が分かってきた。
 6月9には、WHO(世界保健機関)では、新型インフルエンザの警戒レベルを世界的パンデミックを意味するフェーズ6に引き上げた。この頃、関西の感染は下火になり、千葉や東京でぼつぼつ患者が発生し、関東でも数百人レベルとなった。6月25日には米国CDC(米国疾病対策センタ)では、「真夏に消滅」説を撤回して、米国での感染者数はすでに、100万人を超えるかも知れないと発表した。6月29日には、世界で初めてタミフル耐性のあるウィルスがデンマークで検出されたとの情報があった。更に、関西ではこの2週間前にタミフル耐性菌が見つかっていたが、隠していた様だ。何てこった! 耐性菌ができる原理は、たまたま突然変異である薬品に耐性を持った菌ができる場合もあり、特に、今まで効いていた抗がん剤が効かなくなった場合などでは、何億とあるがん細胞の一つが抗がん剤に耐性を持ち、それが増殖し始めると効かなくなる様だ。一方、人間の体はトポロジカルには「ちくわ」型であり、口、腸から肛門までの「ちくわ」の内空部分には多くの有用菌を飼っている。それらの有用菌がまず耐性化して、それと有害菌が遺伝子交換して、耐性菌ができる方の確立が何百倍も高いと思われる。また、強毒性の鳥インフルエンザの蔓延してるインドネシアにも新型インフルエンザの患者がでたとの情報もあり、同様な遺伝子操作で、新しく人から人への感染を広げる能力を獲得した強毒性の鳥型インフルエンザが発生する危険性は非常に大きい。

★ワクチンは有効か?
 一方、今年の冬までに2500万人分のワクチンを準備できるとの報道があった。ワクチンの概念はパスツールが発見し、天然痘などの幾つかの感染症は世界から撲滅されつつある。一方、インフルエンザはその容態を変えるため、撲滅には至っていない。ウィルスは地球で最小の生命体と言われている。したがって、自らDNAを持ち、同じ生命体をコピーして蔓延するわけである。地球上の全ての生命体は、細菌・植物・動物の全てが、その細胞にDNAを持ち、自分自身のコピーを子孫に残し繁殖してる。DNAはA・G・C・T(アデニン・グアニン・シトシン・チミン)の連続する3つの組み合わせで、20種類のタンパク質を合成すると言う原理で細胞を合成している。これはセントラルドグマと言われ地球上の全ての祖先はある1個の生命体を起源として証拠とされている。人間などの生命体は5本の指を持ち、左胸に心臓があるなどの共通点を持つ一方で、DNA鑑定では数億分の1の確率で特定の個体を区別できるなどの強烈に凄い能力を持っている。インフルエンザに話を戻すと、そのDNAの中にはウィルスの皮の部分を作る幾つかのたんぱく質の組合せも含まれていて、動物などの免疫細胞は、一度やられた皮の形を記憶していて、2度と同じ皮を持ったウィルスにやられないように防御する機能が免疫機能である。インフルエンザ・ウィルスは突然変異などで皮の形が変わり易く、A型とかN型とか色々な形のウィルスが存在する上、毎年少しずつ変わっているらしく、撲滅には至っていないのだと思う。半年位前の報道では、ウィルスの皮の形ではなく、もっと核に近い内部のたんぱく質を目標にしたワクチンの研究が進んでおり、2~3年後には実用化するかもしれないと聞いた。もしこれが普及すれば、全てのインフルエンザを対象としたワクチンができて、もし強毒性の鳥インフルエンザが人から人へ感染する様に変化し、世界的なパンデミックになる前に、それを予防できる事を期待したい。また、ワクチン米とか言って、ウィルスの特徴あるタンパク質を合成する遺伝子を組み込んだ「米」を野菜工場で生産し、それを食べる事で、インフルエンザを予防する技術も研究されているらしい。本当かな!
さて、話は戻るが、今回の新型インフルエンザは、年寄りに感染しないらしいと言われてきた。アメリカの研究によれば、1958年以前に生まれた人(現在、60才以上)のは免疫がある可能性があるとのことだ。1920年頃に、スペイン風邪が流行し、世界で4千万人以上の死者がでた。実は、私の母は3人兄弟であるが、本当は5人兄弟で、2番目と3番目の弟と妹はそのスペイン風邪で亡くなったと聞いた。そのスペイン風邪の変化した弱毒性のインフルエンザが1958年頃に蔓延して、年寄りに免疫が残っているのかもしれない。実際に、本当のインフルエンザに一度かかると4~5年はワクチンを注射しなくても良いとの研究結果がでていたが、同じ型のインフルエンザに対しては、水疱瘡の様に、一生免疫があるのかもしれない。
 6月11日にWHO(世界保健機関)は、今回の新型インフルエンザを世界的大流行(パンでミック)を意味する「フェーズ6」に引き上げ際に、厚生労働大臣は「秋口からのインフルエンザ流行に警戒」との見解を発表したが、狼少年に驚かなくなったマスコミは大きく取り上げていない。今までの例から、インフルエンザ流行の第2波では、より強毒化する事が良くある様で、警戒する必要があろう。また、年末までに新型インフルエンザのワクチンを2000万人分用意し、主として、医療関係者と慢性病の患者に接種するとのことだが、従来の経験から、インフルエンザの蔓延が収まるためには、50%程度の人々に免疫ができた頃と知られており、この程度の量のワクチンでは蔓延を抑えられまい。更に、移動距離が大きい若年層の働き盛りに予防接種しない限り、来年の1月から2月にかけて大流行する可能性が高いと思う。

★ インフルエンザ予防対策に疑問
 従来の季節型インフルエンザの流行期は1月から2月と言われているが、なぜだろうか? ウィルスの生存に有利な事も考えられる。ノロ・ウィルスなどは生存力が強く、患者の汚物が付いた衣類や絨毯などが乾燥して、粉末になって飛び散って感染する事が知られている。また、逆に高温多湿に有利なのはカビ類であるから、カビ類がペニシリンの様にインフルエンザ・ウィルスを直接攻撃する事も考えられる。しかし、カビ類の胞子は顕微鏡で見られる大きさであるから、インフルエンザ・ウィルスを直接攻撃するだけの数は存在しないであろう。
一方、人間の側が冬期に不利になるとすると、乾燥した空気を呼吸する為に、喉や気管、肺に炎症が起こり、その患部からウィルスが入りやすくなる事が考えられる。また、歯周菌が風邪の感染を助長するかもしれないとの研究も聞いた事がある。現在、専門家が指導しているインフルエンザの予防は、「手洗いとうがい」が有効で、マスクはあまり有効でないと聞いたが、本当であろうか? 呼吸器系の乾燥を防ぐためにマスクが最も有効であると思われる。手洗いは患者のウィルスが付いたものを触った可能性があるので、その手で口や目を触った時に有効かもしれないが、それまら、飛沫感染と言われるウィルスが付いた衣服なども帰宅後すぐに脱いで、顔や頭も洗った後に、手を洗わなければ効果が少ない様に思う。うがいの場合も、一旦口や喉に付着したウィルスをうがいで取り除けるのであろうか。感染するまでに数時間かかるのであれば、もっと頻繁にうがいをする様に指導した方が有効であると思う。ウィルスは胃液には死滅すると思うので、ペットボトルの水でうがいして飲み込むのでも効果があると思う。また、鼻や目に付着したウィルスはどうするのかだろう。やはり、いろいろと考えると、インフルエンザ予防には、マスクが最も有効であると思う。

追記:7月末のある日、大阪大学のある研究者のインタビュー番組で聞いた。詳細は聞き洩らしたが、お茶の成分であるカテキンを含む脂肪酸に抗菌効果があるそうだ。インフルエンザ菌が増殖する際のある機能を抑制する効果かと思われる。動物実験ではタミフルの100倍の効果が見られたそうだ。日本の医療薬品の認可までには通常5年位かかるそうだが、マスクなどの抗菌薬ならもっと早く認可されるかもしれないとの事であった。新型鳥インフルエンザの危険があるこの際、もっと早く認可してもらいたいと強く思う。
以上


「素人が憂える脅威シリーズ」に興味のある方は、以下のメニュー・アドレスから、別のアップも参照してください。
http://kikyossya.at.webry.info/200907/article_1.html
シリーズ①:政権交代後の期待と憂慮
シリーズ②:世界大都市海没の脅威
シリーズ③:日本人大量餓死の脅威
シリーズ④:日本の水と森林壊滅の脅威
シリーズ⑤:世界最終戦争の脅威
シリーズ⑥:世界金融危機の脅威
シリーズ⑦:新型インフルエンザの脅威
シリーズ⑧:宇宙誕生から地球消滅の驚異(2007年記)
シリーズ⑨:地球は誰のもの-地球を守る政治-(2006年記)
シリーズ⑩:人類は何処から来て、何処に行くか(2003年記)

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